4/8

新芽が眩しい。一面褐色の木々が一斉に芽吹くこの時期はとても好きだ。あと2,3週間もすればこなれた緑色に変わっていつもの日常が戻ってくるけど。

 

読んだ本。

・月と6ペンス(モーム

これは面白かった!ゴーギャンをモデルにした小説。最後まで大したイベントの起きない物語だが、描写がきれいで飽きなかった。タヒチの描写がすごくいい。行きたい。

・忘れられた日本人(宮本常一

民俗学の本。少し読んで積読になってたのを読破。昔の日本の田舎の風景にはやっぱりロマンを感じる。どこが好きかって言われたら何だろう、信仰について?山を崇める無垢な人たちが祭事を行って、山は霧にかすんだり頂に雲をかけたりと時に神秘的な姿を見せる。祭りには縁日が出て、喧噪、いろいろな食べ物の匂い、はしゃぐ子ども、浴衣。花火、瓶のサイダー、夏。古くからの信仰、自然の神秘と現代的な祭りのイメージという実際は重ならないイメージがが重なってセンチメンタルなイメージの複合体ができている(自分の中で)。RADWIMPSにセプテンバーさんという曲があって、中学生の頃その非公式(?)PVを見ていたく感激した。今は消されてるけど浴衣で夏祭りに出かけた男女が何するんだっけ?全く覚えてないけどその鮮やかな夏祭りの映像だけは強く心に残ってる。何言ってんのかわからないけどそういったいろいろな記憶やイメージの断片が合わさって自分の田舎への信仰が作り出されてる、という話。

 

夏は熊野古道に行きたい。民家っぽい旅館に泊まって昔話を聞いたり本山を訪れて信仰を肌で感じたい。京都も伊勢神宮もいささか人が多すぎた。

 

 

明日も雨だ。

4/7

街が浮かれている。桜が咲いた。夕方暖かかったので一人で花見をした(立ち尽くした)。みな楽しそうで厳しくなったので帰った。

 

向井秀徳の言う、「光の色、空気の匂いにサァーッとくるあの感じ(うろ覚え)」が好き。大切にしたい感覚。アジカンの「橙」を聴くと秋口の部活帰り、荒川の土手に座って友達と夕日を眺めて、コンビニでどのアイス買うか死ぬほど悩んで、ちょっといつもと違う裏道歩いてみたりして、埼京線乗るときはもう真っ暗でみたいな高校生時代を思い出す。もしかしたらこんなことなかったのかもしれない。でもそれって全然本質じゃないんだよね。これも向井秀徳が言ってたな。

 

最近買った/借りたCD、day wave, aphex, superchank, supercar, yo la tengo, 相対性理論, lou reed, the xx, JAMC。スウェーデンの田舎で夕焼け眺めながら聴きたい曲はaphexの4。哀愁誘うメロディが最高。

 

読んだ本。

・「この人を見よ」(ニーチェ

ニーチェ、絶対ドイツ人に個人的な恨みあると思う。今の自分はニーチェニヒリズムから希望への意志、活力、闘争心を奪った感じで、要するに最悪。

・「ポアロ登場」(アガサクリスティ)

推理小説は新しい方が面白いな。まあパイオニアとしての価値は極めて大きいんだろうが。でも結構面白かった。

・「リスタデール卿の謎」(アガサクリスティ)

こっちは駄作、時間の無駄。でも最後の話だけは好き。ヨーロッパの田舎、城、金持ちが立てた個人劇場、陰のある主人公(美人)、劇中殺人って恩田陸感。逆か。

・「サマータイム」(佐藤多佳子

佐藤多佳子は二作目だけどあんまピンとこなかった。少なくともニーチェの後に読むもんじゃない。

4/1 備忘録

年度が変わった。緩やかで漫然とした絶望は変わらない。

 

あまり絶望とか無とか考えるのは健康によくない。思索を殺して希望を得る。

 

 

ここのところ意識して小説を読むようにしている。心が動くから。高校生くらいまでは多くの本に感動できていたのに、最近それが分からなくなりつつあるんじゃないかと恐ろしい。「麦の海に沈む果実」を読んだ時の衝撃は覚えているけど、それがどんなものだったか肌で思い出せなくなりつつある。このまま徐々に何にも感動できなくなり、音楽も本も懐古するばかりになり、日常の愚痴と些細なうっぷんを垂れ流す大人になるのか。

 

思っていることを文字にするといかにも自意識過剰な青春小説の主人公みたいでうんざりする。いかにも「主人公は子供から大人への過渡期で、欺瞞やくだらない建前に敏感であり反発する。言いようのない無力感、絶望感、厭世観にとらわれ、また失われていく感性、感情に縋りつきながらそれを引き留めるすべを知らない。」なんて「あとがき」に書かれそうな。クソだ。

 

・シカゴ育ち(スチュアート・ダイベック

製氷庫の話が良かった。クスリ漬けで酒浸りの若者がもがき葛藤しながら美しく破滅していく話は大体最高。時折挟まれる超短編もいい。

 

日はまた昇るヘミングウェイ

淡々とした語りに痺れる部分が所々あった。厭世主義、その日暮らしみたいな典型的な青春小説。関係ないけど酒飲みすぎ。仕事緩すぎ。

 

ライ麦畑でつかまえてサリンジャー

今更サリンジャーかよって感じだけど。まさに大人と子供を揺れ動く少年が主人公で、共感できる部分もあるんだけどいささかセンチメンタル過剰な部分もある。高校生の時読みたかった。本当にしょっちゅう参っちゃうんだよな。自分には堕落する勇気はないけど。

 

・名短編ここにあり(宮部みゆき北村薫選)

息抜き。さりとて心に残った話はないけど、それまた一興。

 

その他、何冊か読んだけど忘れた。ちゃんとつけて忘れないようにしたい。

 

3/27 音楽

早速間が空いてしまった。

 

季節が進んでゆく。気づけば桜の蕾は大きくなっている。ほんの少しずつ徐々に、季節の移ろいへの敏感さがすり減ってゆく。悲しい。

 

季節と記憶と音楽はリンクしている。追憶が呼び起こす感傷が好きだから季節が好きだし、音楽が好きだ。自分の民俗学、信仰、青春小説への愛はこの辺とすべてつながっている気がする。言葉にするのが難しいけど。

 

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最近見つけたバンド。詳しいことは全然知らないけど、過渡期のJoy Divisionを限界までセンチメンタルにした感じだ。あるいは初期のNO。Dreams never end. 卒業を迎えた今の自分にはどうしようもなく沁みる。

 

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Yo La Tengoは最も季節に合う音楽を作るバンドだと思う。飄々とした雰囲気も、ジェームズとジョージアの安定感も、アイラの声もギターノイズも全部が大好きだ。この曲もただのギターポップでは終わらず、遠くで鳴るフィードバックやアドリブでノイズまみれのギターソロなど、どこまでもかっこいい。

2年前の春、少し霞んだ晴れの日にバスに乗って遠くに行ったことを思い出す。Our way to fallやI heard you lookingを聴けばいつでもバスの車窓や空気のにおいがよみがえる。

 

春先の寒い日、夕焼け、卒業間近ということでいささか感傷的だ。

誰に話しているんだろうか。

2017/3/2 無

卒論が終わって暇になった。無のことばかり考えている。

 

見渡す限り無しかない。ノートもパソコンも空のペットボトルも椅子も暖房も服も全てが借り物の表象で、そこに絶対性はない。揺らがないものも見いだせない。

 

考える時間が長いと気分が沈む。走ったりトレーニングしたりする時間は没頭できるから気晴らしになるし、何より自分がモチベーションを持ってそれをしたいと思っているのが救いだ。

実存主義的にはこうした埋没は批判されるべきものなんだろうけど、僕はむしろもっと日常に埋没したい。存在も時間も認識も考えたところで誰も救えない。誰が哲学を偉そうな学問にしたんだろう、こんなの暇人と金持ちと馬鹿の道楽だ

 

哲学的思索はファンタジーとして楽しんで、浸食されないのが目標だ。

 

春が近い。昼間学校に行ったら空気に靄がかかったようだった。眼鏡を拭いたら直った。

2017/3/1 本

読んだ本や聴いた音楽のメモをしていくと思う。ちなみにこういうの続けられたことない

 

自分は読む時期と読まない時期の差が大きくて、年末から2月にかけては今まででもかなり読む方の時期だった。いい本が多くあったので、何冊か抜き出して備忘録のために書き記しておく

※感想のみ、あらすじとかは触れてない

 

・「老子の思想」張錘元(講談社学術文庫

もともと道という(形而上学的意味でなく)超越的な概念に興味があって手に取った。神保町で絶版のため1500円くらいだったのが新宿のブックオフで500円で、ブックオフはアホであり神である

ヘーゲルハイデガー西田幾多郎を踏まえて解釈していく手法が新鮮だった。後半同じことを繰り返しててだれてきていたけど。老子の日本語訳版を読んだときはただの逆張り野郎感がぬぐえなくて失望が大きかったが、理解にも程遠いけど、少しは近づけたかな

悟りは遠い。悟るためにはほとんどのものを捨てなければいけない。覚悟がない

 

・「哲学する心」梅原猛講談社学術文庫

積読から適当に引っ張り出した。若いころはずっと死について考えていて、死の哲学である実存主義者たるには身を焦がすほどの死への自覚を要するという記述が熱かった。実存主義者たる覚悟はある?無いに決まってる 甘んじて日常に埋没している

 

・「地獄変他」芥川(岩波文庫

今更。「袈裟と盛遠」と「地獄変」が良かった。地獄変の好人物として描写された殿様のサイコパス感。全員が全員狂ってる。「藪の中」は解決がああいった形なのは海外の影響のなさを反映してるのかな。推理小説作家なら血眼で論理的解決を目指すんだろう 論理も所詮は宗教だ、神は死んでいる

 

・「知られざる傑作」バルザック岩波文庫

バルザックは2冊目で、これは短編集。「絶対の探求」と表題作はほぼ話の枠組みが同じだった。どちらも究極の理想を求めて破滅する話で圧巻。とくに「知られざる傑作」は作中の芸術理論が秀逸で、苦手だった肖像画も楽しめる気がしてきた。あと「ざくろ屋敷」が完全にユートピア。何もしたくないし、ずっとそこにいたい

 

・「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない桜庭一樹(角川文庫)

 強烈に悲劇的。主人公の兄は高校生にして引きこもり、本ばかり読んで超然としている。それでもいざ現実に立ち向かおうというとき、あまりにも無力で、それを自覚することが大人になるってことなのかな 偉そうな思想や知識=砂糖菓子の弾丸じゃ世界を撃ち抜けない

 

・「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キース(早川書房

・「闇の奥」コンラッド岩波文庫

・「破戒」島崎藤村岩波文庫

差別/被差別小説のこの三つを短いスパンで読んだので心が厳しかった。どの時代もその時代の当たり前があって、その当たり前が当たり前として認識されていた事実が恐ろしい。たぶん今も、あるべきでない当たり前がたくさんあるんだろう。「破戒」は部落民の主人公が差別される様を描いた小説で、当時の社会を鋭く批判しながらも、「主人公が部落民特有の身体的特徴を有していないというキャラクター設定から筆者自身差別感情に打ち克てていない」という解説がこれまた厳しかった。

バカもハゲもブスも精神障碍者もみんな懸命に生きているという大前提を忘れてはならない

 

長くなったがまだある気がするので後日また。はたして続くのか